死の事実性の認識。法医学

死の事実性の認識人間が他の生物と異なる一つの特徴は、人間、とりわけ自分自身がやがて死ぬということを「知っている」ことである。

いいかえると、未来を考えることができる動物は人間だけであるといえる。

哲学者樫山欽四郎は、『哲学概説』において、人間の本質的な特性として「死を自覚する存在」であることを挙げ、「死を知ることがなければ、人間はこれほど楽なことはない」という趣旨の言葉を述べている。

自己が死ぬことを知っているがゆえに、人間の哲学的営みは始まるのであり、古来より伝わることわざには、「哲学は死の練習である」というものがある。

しかし、死を知るということは哲学への契機でもあり、また宗教への契機でもあり、更に、一般に人は、自己の死をどのように受け止めるか受け入れるか、一生をかけて問いかけ続けているともいえる。

突然に事故などで襲ってくる死の場合は、死について考える余裕さえない。

しかし、飛行機事故などで、突然に、あと半時間後、一時間後には死ななければならないと自覚された場合など、人は様々な想いに耽り、短時間のあいだに死を受容せねばならない必要に迫られる。
update:2010年02月19日